2025.11.12 00:28続編〜ジミーとロボット、音の庭へ 午後の日差しが工房の窓から差し込み、木製の床に柔らかな光の帯を落としていた。ジミーは作業机の引き出しを開け、古びたレコードを一枚取り出す。ラベルには「モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番」と記されている。ジミーはターンテーブルに針を落とす。わずかなノイズのあと、澄み切ったピアノの旋律が流れ、室内を包み込む。 オーディオの再生は一部のマニア...
2025.11.10 02:11ジミーと不機嫌なロボット 西暦2128年、天空都市エアロポリス。 10歳になったジミー・ハドソン少年は、前からの夢を叶えるべく父に頼み込み、最新型のAIロボットのパーツを買いに出かけた。といっても本格的な軍用や産業用ではなく、子ども向けのDIY遊びロボットキット。しかし未来社会のそれは、遊びといっても侮れない。高度な人工知能チップや自己学習アルゴリズムを備え、本...
2025.11.08 23:55暴走 ある日の午前――少子高齢化が極限に達した社会では、人手不足を補うべく人型AIアンドロイドの開発が国家プロジェクトとして推進されていた。国内外の生産工場には高性能モデルがずらりと並び、コスト削減と製品品質の向上に大きく貢献していた。 国家が内需を支えるためにロボット導入を促進する中、一般家庭でも家事や介護を担うアンドロイドの需要は急増して...
2025.11.07 00:55続編~遼の恋の先 春の陽光がまだキャンパスを優しく撫でていた頃、佐藤遼はミサキ・・・栗色の髪と琥珀の瞳を持つその女性のことを考え続けていた。記憶の中のミレイの声が、いまも彼の胸の奥で細い残響を作っている。ミレイは去った。その事実は変わらなかったが、世界はさざ波のように変わり続けていた。遼の胸の中で、もっと複雑で滑稽な物語が音を立てて組み上がり始める。 遼...
2025.11.04 10:08恋 青空がキャンパスを照らすある春の日、工学部3年の佐藤遼は、人垣の隙間からひときわ目立つ一人の女性を見かけた。白いワンピースに身を包み、風に揺れる栗色の髪が陽光を受けて琥珀のように輝く。遼は思わず立ち止まり、胸の鼓動が高鳴った。「こんなに美しい人が大学にいるだろうか」。直感的に恋だと悟った瞬間だった。 翌日も、学食のテラス席で彼女は静かに...
2025.11.02 09:40呪われた物流 雲一つない朝、ロビンソン家の空中庭園には淡い光が差し込み、長女シェリルの誕生日を祝う穏やかなはずの空気が満ちていた。完全自動運転のエアカーが頭上を行き交い、AIヒューマノイドの配達ロボ「パル」は今日も慌ただしく宙を舞っている。「お誕生日おめでとう、シェリル。プレゼントはもうすぐ届くはずよ」母ヘレンは微笑んで言った。家族の期待を一身に背負...
2025.11.01 00:102年ぶりの投稿になります!御年73歳になります。しばらく病気療養で投稿を休んでいました。自宅療養は継続しておりますが、この度投稿を再開します。ボチボチのペースで行きますね(>_<) 枯れた爺さんの描く妄想…いや夢の未来社会をご賞味ください!投稿第一弾は新作SFショートです。課長の椅子 バーニーは今日、朝から出勤日だ。意気揚々とエアカーに乗り込むと、静か...