ミーチャ
ミーチャとは・・・何らかのメッセージを伝えるために憑くとされている場合や、本人の人格を抑えて霊の人格のほうが前面に出て別人になったり、動物霊が憑依した場合は行動や容貌がその動物に似てくる場合もあると言われている・・・地球の言葉では”憑依”と言われているものだ。
ニナが話し始めた。
「地球では憑依という言葉で表現されていると聞いている。悪霊とか憑き物と言って、人の生霊・死霊、動物霊が人間の体内に入ることで、その人が精神的、肉体的に影響を受ける現象をいうそうだけど、これもその一種だね。古くからの言い伝えでは、霊は肉体から自由に出入りできるとする信仰がある。あたしたちの中にもこのような体質を持って生まれた仲間がいた。憑依に対する見方で、最悪の場合、魔法使いや悪魔と見なされ迫害されたりしていた。だけど、これも科学的に解明されるてること・・・」
「その通りだね、ニナの言うことには科学的な裏付けもある」
突然シャリーがポータルに現れた。
「ミーチャに間違いないですね」
リリーが
「カーラはどうなっちゃうの?」
メグが
「外部からの援助は出来ないの?」
「残念ながら・・・」と、言いかけたシャリーが言葉を中断した。
「ちょっと待って・・・今、カーラからのテレパスを受け取りました」
シャリーがカーラの様子を伝えた。
「カーラは今、肉体の乗っ取りを阻止するために、必死に戦っているよ!・・・サイボーグ化のためにはデジタル・マインドが欠かせないのはご存じですよね。基本的には人の意識をデジタル化することで、サイボーグ・ボディを乗り換えることができるのと同じことなのです。サイボーグとの違いは、生身の肉体に対しても乗り換えることができる、ということです。ただ、人工的にデジタル化されていないミーチャは、生身の肉体に対しては色々と不具合が現れるのです。それを古代人たちは信仰の対象にしたり、悪霊の仕業にすることで納得してきたのです」
シャリーが続けた。
「先ほどカーラに、このことをテレパシーで伝えたところ」・・・
時間を少し戻そう・・・
カーラはミーチャとの悪戦苦闘を余儀なくされていた。カーラ自身の身体内で二つの精神が肉体の支配権をめぐって壮絶な戦いを繰り広げていたのだ。この戦いに負ければ、肉体を手放すことになり、最終的に”死”を受け入れなければならなくなるのだ。二つの精神が共存する状況を維持することはできなくはないが長くは持たない。どちらかが妥協しない限り均衡はいずれ破られることになる。
カーラが
「あなたはいったい誰なの?」
「あたしのことを世間はミーチャと呼んでるよ」
「ミーチャ、何の目的で私の身体を欲しいの?」
「欲しがってるのはマリコフさ・・・というよりあんたの命が欲しいんだよ。あたしはマリコフに言われるままに動いてるだけだよ。覚悟してさっさとこの身体を明け渡しな。そうすれば苦しまないですぐに楽になるよ」
ミーチャは壮絶な精神エネルギーの波を繰り出してきた。カーラはこの怒涛のような渦に巻き込まれまいと必死になってもがいていた。肉体のない精神だけの感覚なのに、溺れそうになるような不安感は何なの?何かにつかまりたいのに掴めない・・・もがけばもがくほど底なし沼に引きずり込まれる底知れない恐怖感。広大な漆黒の宇宙に放り出される無限大の絶望感が襲ってくる。
生きる体験の中では、時に恐怖が介入してくる。存在を揺るがされるということは、反面、新しいことへの挑戦になる。しかし、最悪の場合破局を迎える。つまり、恐怖はその両者のちょうど境目となる。恐怖の対象に死がある。気分的に死への傾倒が強くなれば、それにどんどん寄り添っていくと生と死の境界自体がなくなり、死を受け入れる準備が整うと恐怖は消える。そうなれば、生も死も何の役にも立たなくなる。ミーチャが言った”楽になる”という言葉の意味はこのことであった。
「カーラ、聞こえるかい」
突然カーラの薄れそうになる意識の中に響き渡った声があった。その声の主はシャリーのテレパスだとすぐに認識できた。
「今、君が置かれている状況をテレパシーで伝えるよ。君の身体を乗っ取ろうとしているミーチャの正体は・・・」
シャリーからカーラに届いたイメージをすぐに理解することができた。ミーチャが何者なのかをさとると、疲弊していたカーラの精神は徐々に勢いを取り戻してきた。シャリーのテレパシーが、死の崖っぷちからカーラを救うことになったのだ。ミーチャの正体が何であるかに気づかされた時、彼女がサラやニナと同じラクサム人の被爆2世の一人であることに深い悲しみを覚えた。その時、カーラの精神状態は平常心にもどり、ミーチャからの精神的攻撃をすべて跳ね返す勢いが生まれていた。その原動力は、ミーチャを救いたいという心の強さであった。そして、カーラは脳裏に浮かんだひらめきをミーチャに伝えようとしていた。
ミーチャが自分の精神攻撃がカーラに対して効力が薄れてきたことを感じ始めていた時、カーラはミーチャに尋ねた。
「あなたの本当の名前は?」
ミーチャは焦りを隠そうとしていた。
「そんなことどうでもいいだろう。何で聞くんだ?」
「あなたを助けたいからよ」
「何を血迷ったことを言ってんだ。油断させようなんて・・・騙されないよ、あたしは目に見えないものに頼るほどバカじゃないし、お人好しでもないよ」
「嘘じゃないわ・・・あなたにはサラやニナと同じ心を感じるのよ!」
「・・・あの双子の姉妹・・・」
「そうよ、今では私たちの仲間。それからラルス親子、クリスタも、イレール、レオンも、マリコフから縁を切って私たちの仲間になってくれた・・・あなたにも同じ心があるはずよ。私の心を開放するから読んで・・・」
カーラはミーチャに対して自分の心を惜しげもなく開放してみせた。
ほどなくミーチャが戸惑いながらも、
「あたしの名は・・・ルフィナだよ」
「ルフィナ・・・あなたのために私たちが新しい身体を用意するわ」
「何だって?」
この時、カーラはシャリーにテレパスでサイボーグ・ボディを要請したのである。
シャリーが続けた。
「先ほどカーラに、このことをテレパシーで伝えたところ」・・・
・・・「彼女はサイボーグ・ボディを用意してほしいと言ってきました」
リリーが即答した。
「私のレスキュー・ボディを使って!」
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