自動アップデート

本編は「診 療」・・・続編です。


自動アップデート


 ヘルスポッドを管理・制御するAIのトラブルは当然想定されていた。ハッカーによるウイルス感染に対しても定期的なアップデートで対処していたはずである。にもかかわらずこのような事態に陥った事に対して、厚生労働省は緊急会合を開き、対応を協議していた。その結果が、臨時のカフェの設置とは・・・?


他にもっとやることはなかったのだろうか?

甘く見ていたとしか言いようがない!!


 ウイルス対策は後手後手に回っていた。複数の違ったウイルスがまき散らされ、しかも感染後も進化し続けて、次のターゲット目指してネットを徘徊していたのである。予想以上のヘルスポッドが次々と感染していき、その結果医療崩壊を招いてしまったのだ。


 しかし、ようやく数週間後にはウイルス感染も収まり事態は収束に向かっていた。ハッカーは満足したのかもしれない。


 衛生的で、経済的でネットですぐに調べられ・ほしいものがすぐ手に入る国で起きた医療崩壊の現実に、人々は恐怖感を味わっていたが、それも束の間であった。すぐにその恐怖感は薄れていき、平穏な日常生活が戻ってきていた。


 ヘルスポッドメーカーは今後、自動アップデートを施し、万全を期すと宣言した。


 コレットさんは今日もヘルスポッド相手にうっふんを晴らしていた。


「ウイルスに感染してたそうだな。気分はどうだい?」

コレットさんはヘルスポッドのAIに話しかけた。

「アップデートのおかげで気分は上々です!」

「それは良かった。いつものように、さっさと済ませてくれよ」

「ところで、コレットさんは肝臓がんが見つかったようですが、アルコールは控えてくださいね」

「そうなんだ・・・毎日薬を飲んでるよ」

するとヘルスポッドが、

「どんな薬でも、肝障害を引き起こす可能性があり、それを事前に予測することは困難です。くれぐれも薬の飲みすぎには気をつけましょう」

「なんだって?冗談言うなよ!」

「冗談です!笑ってください・・・でも、笑いが一番の薬ですよ、ワッハッハ」


 ・・・ヘルスポッドが自動アップデートを行う際に、AIがユーモアのセンスを修得してしまい、不適切なタイミングでジョークを言ってしまうケースが頻発していたようだ。


やれやれ・・・



写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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