レオン君

 ある日の夕方、ジョンは犬を連れて散歩していた。昔は犬の散歩なんてまったく珍しくもなかった光景だ。公園に行けば一人や二人は必ず出会うし、飼い主同士の会話が弾むのも日常茶飯事のことでした。だが、今はすれ違う誰もが珍しそうに眺めていく。そう、皆が見ているのはジョンが連れている「犬」である。犬自体が珍しいわけではないのです。ランニングですれ違ったジョンの知り合いが話しかけてきました。

「ジョンさんこんにちは、犬ですか、すごいですねー」

「いやいや大したことないですよ」

「とんでもない、犬を飼えるご家庭はそうそういませんよ。最近儲かってますね」

五十年前は犬に限らず猫や小鳥などの動物は誰でも飼うことができたのですが、今はそう簡単にできないのです。動物愛護の観点から規制が厳しくなり、厳正な審査をパスした飼い主候補だけが許される特権になってしまいました。まぁ、そのかいあって保健所で殺処分される犬や猫は激減したのも事実です。その代わりに人気なのがロボット犬やロボット猫ですが、ロボット犬をわざわざ散歩に連れ出す人はいません。

「犬種はなんというんですか?」

「ゴールデンレトリバーですね」

 たくましい体つきと、美しく金色に輝く毛並みをもつ大型犬、ゴールデン・レトリーバーは、愛嬌たっぷりで、人なつこく感情豊かな暗褐色の目と漆黒の鼻が特徴的だ。温和で愛情深く、学習能力も高いことから、世界中でコンパニオンドッグとして愛されてきた犬種です。でも、ジョンはこの犬の秘密を打ち明ける勇気がありませんでした。

「まいったなぁ」ジョンはもじもじして犬のほうを見ていたら、突然犬が人間の言葉でしゃべりだしたではありませんか。

「僕、レオンです、よろしく」

「おいおい!犬がしゃべったぞ、ロボット犬だったとは、よくできてるねぇ」

 ジョンの犬は最新型ロボット犬だったのです。


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写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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