ルフィナのニュー・ボディ
ルフィナはベッドから立ち上がって、おもむろにウィン博士に近づくと、
「憑依する時は、いつでも誰に対しても自由だ。時と場所を選ばず憑依できるよ。だけど、生命反応を感知した者だけだよ。サイボーグやアンドロイドは無視している。そして、憑依された相手は、あたしがその肉体を支配しようとしない限りは、まったく気づくことはないね。・・・実は、あたしが火星に来るまで何人もの人の身体を乗り移ってきて、カーラにたどり着いた。直前にはボブにも憑依していたよ」
この発言をそばで聞いていたボブは、驚きのあまり口に含んでいたコーヒーを吹き出してしまった。
「ぼ・・・僕に憑依していたなんて噓でしょ!」
一同の視線がボブ・カーヴェルに集中した。
ルフィナが
「大丈夫だよ、あたしが立ち去った後は何の痕跡も影響も残さないから」
一日だけでも休養を取ることを周囲から勧められたが、カーラはすぐにボブとともにマーズオフィスに戻ろうとしていた。マーシャン・リームとのワープ・ドライブの地球での配備に関する協議を再開したいという思いがあったのである。
一週間後には、マーシャン・リームとの協議を無事に終えたカーラは、再び地球のソフィアオフィスに来ていた。ルフィナのためのボディがルスラン博士から提供されるのに立ち会うためであった。スーパーツインズ、リリー、クリスチーヌ、ラクサム人たち、ウィン博士が立ち会った。
見た目はまったく地球人女性と変わりなかった。ストレートで長い黒髪。身長は170cmくらいのすらりとした体形。黄色系肌色で日本人のような顔立ちである。
ルフィナの新しいボディを目にした時、ウィン博士がルスラン博士に耳打ちした。
「お前の好みのタイプに仕上げたな」
すかさずルスラン博士は人差し指でウィン博士の唇を制した。
「シー・・・ついでにヒューマンセンスも搭載しておいたから、これからは皆と同じように飲食が出来る」
ルフィナはリリーのレスキューボディから、すぐさま新しいボディに乗り移ると、ベッドから起き上がり、床に足をつきおもむろに立ち上がった。
開口一番ルフィナは、
「すごくしっくりくるよ。まるで何年も付き合ってきたボディみたいだね。ルスラン博士、ありがとう」
「そう言ってもらえると、私も造った甲斐がある」
ルスラン博士は言い終わると、ウィン博士の肩をたたいてウインクしてみせた。
ニナが思い出したように、
「そう言えばルフィナ、ミーチャの仲間が何人かいたよね」
ルフィナが、
「リオネルたちかい?・・・彼らはマリコフの下で出番を待ってるよ」
リリーが心配そうに、
「既に誰かに憑依してるってことは・・・ないですよね?」
「大丈夫だよ、あたしはミーチャが地球に来たら直ぐに感知できるから・・・それにしても、地球ってとこはあたしにとって天国みたいなところだね」
ルスラン博士が、
「そうでもないさ、どうしても地獄を見たいという輩がいっぱいいる・・・今にわかる」
その地獄を見たいといってマリコフに同調しようとしている統治者が暗躍を始めていた。
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