同 調
ルフィナが突然大きく目を見開いた。
「大変だ!・・・リオネルたちがマリコフと一緒に地球にやって来たよ」
ルスラン博士が
「マリコフが自ら・・・」
ルフィナは
「マリコフは地球で何か大きなことをやらかそうとしてる・・・感じるんだ!」
リオネルたちはインドにいたのだ。ラージャスターン州内西部はタール砂漠がある。インドで面積が最も大きい州である。州都はジャイプル。トラやヒョウが生息する丘陵地帯やジャングルもある。タール砂漠が砂漠化する前には、インダス文明が栄えていた。州としては1956年に成立していた。
ウィン博士が
「いったい地球で何を企んでいるんだ?リオネルたちが一緒に来たということは、またカーラやメグに憑依しようとするかもしれんな。確認しておきたいが、クアンタムやサイボーグには憑依しないと思っていいんだよね、ルフィナ?」
「そんな発想はないよ。あくまでも生身の人間を狙って憑依するハズさ」
「それを聞いて少し安心したよ・・・」
三日間は何事もなく過ぎた。
ルフィナはリオネルへの同調を試みていた。居場所の特定のためだ。同調しようとすれば相手にも伝わってしまうが、先刻承知の上だ。テレパシーではないので意思疎通は出来ないが、意識をより強く集中することでピンポイントに場所を特定できる。当然相手も同調を察知して、何らかの手を打ってくるだろうことは予測できる。用心するに越したことはない。
ドゥルーズ星のサイボーグたちはあらゆるエネルギーを吸収して自分のパワーに変換する能力を持っている。以前、サイモンとミニョンが機能停止させられた苦い経験がある。おそらくマリコフはまた彼らを起用してくるに違いないとルスラン博士は予測していた。そこで彼は、エネルギーを吸収されると機能停止に陥ってしまうスカイ・フォーとファンタスティック・スリーのために防御システムを授けた。エネルギーの吸収を感知すると自動でバリアを張って防止するのである。
そしてウィン博士は、生身のスーパーツインズのために新たな防護スーツをつくった。これはスーパーツインズの弱点を補うためのものだ。
追加されたスーパーツインズのための防護スーツとは・・・
必要に応じて防護スーツを身にまとうことで、宇宙空間や水中、あるいは猛毒ガスの中でも活動ができるようになる。酸素の供給と宇宙線、有害物質の遮断、さらには生命反応の感知を無効にする機能も搭載している。
見た目も実際もサイボーグやクアンタム、アンドロイドたちと同じく、外界が無酸素状態でも身体能力を発揮できるようになるのだ。そして、これによってミーチャの憑依も防止できるだろう。
ルフィナが最も懸念を示していたのがフィオナのことだ。フィオナはリオネルの妹だ。フィオナは動物への憑依が得意だが、不安を喚起して人の意思決定を支配することができる・・・一種のマインドコントロールである。多くの獰猛な野生動物が食料とする獲物以外に相手を襲う時は不安と恐怖心からだ。この限りない不安と恐怖心を人の心に喚起させる能力を持っている。これを回避する手立ては思いつかないでいた。
用心に用心を重ねたサリームメンバーは、サラとニナ、そしてルフィナと一緒にリオネルたちが待ち構えているタール砂漠にテレポートしようとしていた。その時、ラルス親子やクリスタ、イレール、レオンたちも同行を望んでいたがサラが制止した。
「あんたたち素人の出る幕じゃないよ。でも、緊急の時に備えて待機してな」
一方マリコフは、この地球上でマーシャン・リームのワープ・ドライブを自分たちの手で製造し、ハリッシュの所有している核弾頭の転送を始めようとしていた。銀河連合は”核”に対する異常なまでの警戒心が強く、銀河連合認証の転送ポータルは、核物質に関する一切の転送処理ができないように、転送対象をスキャンしてポータルを制御するテクノロジーを例外なく搭載していた。だから、核の転送にはマーシャン・リーム製造の”ワープ・ドライブ”を使うしかなかったのだ。マリコフは以前マーシャン・リームのリーヌスにワープ・ドライブを製造させた時、抜け目なく側近に3DCADのコピーを入手させていた。
今では、ハリッシュはマリコフの操り人形となっていた。ハリッシュの側近たちもマリコフを受け入れている。マリコフは慌ただしく側近たちに指示を出していた。その時、そばにいたリオネルがマリコフに耳打ちした。
「ルフィナが我々の居場所を探して同調してきましたよ」
「居場所の同調は例の場所だ。サイボーグたちを集結させておけ、そこへおびき出すんだ」
例の場所・・・とは
タール砂漠のど真ん中に位置する小さなオアシスである。もちろんこれはマリコフが砂漠の小さな湖の周囲に造った偽装の「憩いの場所 」だ。これは単なる見せかけである。このオアシスにはいくつかの仕掛けが潜んでいた。マリコフはここにサリームをおびき寄せて一網打尽にする手筈を整えていたのである。
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