ベンちゃん動物園に行く

本編は「祖父母のショック」…続編です。


ベンちゃん動物園に行く


 ある日、ベンちゃんはトミーと動物園に遊びに行った。

 動物園では様々な動物たちを見て楽しむが、ベンちゃんは動物たちの生態や特徴についてしつこく知りたがる。


「あの大きな猫みたいな動物は何というの?」


トミーが答えた。

「あれは猫じゃないよ。トラと言うんだ。ネコ科の動物には違いないけどね」


 動物園は100年前とはずいぶん姿が変わっていた。今は人と動物の立場が逆転しているように見える。動物たちは広い敷地内を自由に動き回っている。逆に人間たちはドーム状の囲いの中から観察するような形態が多くなった。もちろん、サファリパークのように、動物たちの生息域に乗り入れることができる貸し出し用のエアカーもある。さらにはVRを使って園内を散策することもできる。


 しばらく広い園内を貸出用オープン・ミニ・エアカーで散策していくと、ベンちゃんの好奇心はピークに達していった。


「あのキリンは何で首が長いの?」

「あのペンギンは何で飛べないの?」

トミーはベンちゃんの質問に答えようとするが、知識が足りなくて困っていた。そこでベンちゃんは近くにいた飼育員に質問することにした。


その飼育員と思しき人物は、園内を観察・監視して回っている職員だった。

「あのおじさん、あなたは動物園で働いていますか?」

「はい、そうですよ」

「じゃあ、あなたは動物たちのことをよく知っていますか?」

「何でも聞いてください。私は動物専門の観察員です・・・ところで、あなたの専門はなんですか?」

ベンちゃんは逆に質問されてしまった。


どうやら、その人は、ベンちゃんを何かの専門知識を持ったAIロボと勘違いしたようだ。そこへトミーがやってきた。


「これは僕が作ったロボット、ベンちゃんです。今はいろいろ勉強中なんだよ」

「・・・そうなんだ。何でも聞いて、ベンちゃん」

ベンちゃんはちょうどライオンのブースに来ていたので、中のライオンたちをじっと観察していたが、


やがて・・・


「それでは、あなたに質問があります」

あのライオンとあのライオンは仲良しなのですか?」

「ええ、仲良しだと思いますよ」

「では、あれは何をしているのですか?」


観察員は、そばに小学生のトミーがいることを気遣いながら徐ろに答えようとしていた。あからさまな説明はしないように・・・ベンちゃんが見ていたのは、ライオンたちが交尾している現場であった。


「・・・、あれは新しい命のための行動だよ」

ベンちゃんは

「新しい命のための行動ってなんですか?」


「・・・」





写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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