クッキング

 フランクさん一家は4人家族。七歳になる息子と十二歳の娘、そしてパートナーだ。パートナーは今日は朝から友達と休日を楽しむため出かけていない。息子も娘も午前中は週2回の学校の登校日でお昼まで帰ってこない。フランクはというと自宅でテレワーク中である。

 そろそろお昼になる。子供たちも帰ってくる頃だ。昼ご飯は久しぶりに何かクッキングをしようか。さて、何を調理しようかな。簡単にできる料理を手作りで食べさせてやろうかと考えていた。手作り料理なんて贅沢極まりない。今の時代、女も男も料理なんてまともにできる者は少数派だ。生まれて初めて手料理というものを口にする大人も結構いるのだ。そういえば、子供たちにもめったに作ったことがないことに気づいた。

 フランクがなぜ手作り料理ができるかって?

 実は両親の祖父母が昔料理店を営んでいた。その頃はまだ飲食店が点在していたのだ。そして、両親も飲食店を継ぐべきとの考えから料理を作ることに何の疑問も抱かず料理の腕を上げることに熱心だった。当然彼も小さい頃から親の手料理をまじかに見て育った・・・というわけだ。

 彼はさっそく料理に使う道具を奥の部屋に探しに行った。調理道具は両親の形見でもあるので今でも大切に保管されている。フライパンを出してきた。彼はチャーハンを作ると決めたようだ。レシピの具材や調味料はキッチン家電と一体になった食卓の本体にストックされているので、チャーハンレシピに必要なものはキッチン家電が用意してくれる。どうしても食材がないときは代替え食材を提案してくれる。このキッチン家電のAIに料理名と人数を告げると、AIがすべて調理するようにできている。料理が出来上がるとキッチン家電の横長の口が開いて料理が乗った皿とともにテーブルがせり出してくる・・・という仕掛けだ。簡易的なキッチン家電は調理をしてくれるだけだが、ちょっと高級なキッチン家電になると自分で調理するための仕掛けまで用意されているのだ。

 彼はチャーシューやえびが欲しかったがベーコン、ウインナソーセージで間に合わせた。ご飯、青ねぎ、しょうが(みじん切り)、サラダ油、塩、こしょう、しょうゆを用意した。本来なら中華鍋であろうがないのでフライパンで代用だ。

 準備ができた頃、二人の子供たちがエアカーで帰ってきた。エアカーは完全自動制御で飛行するので搭乗者が運転する必要はない。彼の祖父母の時代までは「運転免許」を取得しなければ車に乗れなかった。いまはエアカーもすっかり家電製品と化している。

 子供たちがキッチンにやってくるといきなり娘が、

「お父さん何やってるの?」

「チャーハンを作ったんだ、うまいぞ」

息子がさっそく食べ始めた。

「どうだ、うまいか?」

「こんなもんでしょ、ねぇちゃん、食べてみて」

「・・・おいしいと思う」

 彼は子供たちの反応が思ったほどでないのが気にかかる。さっそく自分も食べてみた・・・どうも塩加減が・・・。自分の腕が鈍ったようで意気消沈した。きっと贅沢と言われる手料理に対する子供たちの評価は確実に下がったことは間違いなさそうだ。

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写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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