初めての宇宙旅行

 ミョンさんとパートナーのレンさんはいつになくウキウキしていた。それもそのはず、生まれて初めての宇宙旅行に出発する日なのだから。

 後進国では人口は増え続け、世界の総人口は確実に増えている。環境問題の悪化、地球温暖化も進んでいるなか、新しい開拓地として人類が選んだのは宇宙である。一大事業になるという希望が詰まった宇宙事業の成長が加速し、この事業にぞくぞくと民間企業が参加していた。しかもそのレベルや規模が想像以上に凄い!民間企業だからできる技術革新のスピードは国家レベルをはるかに超えたスピードだ。国家が莫大な予算を投じていた宇宙開発が、民間企業が行えるようになったことで技術の進歩が飛躍的に早まった。

宇宙からの地球観察を官能できるフライト1時間と約5分の無重力体験ができる。全フライト2時間の「宇宙旅行」である。これを世界中の裕福な宇宙マニアたちは今か今かと待ちわびていた。

ミュンさんの息子はそんな宇宙開発に乗り出した企業のエンジニア。本来なら「宇宙旅行」の費用は一人2,000万円を下らないはずである。ところが格安で体験できるプランを提供することも可能にしたのがミュンさんの息子のアイデアでした。

少子高齢化の進展で、生産年齢人口が減少していくという先進国共通の課題があり、この問題の解決に取り組むべき開発が進められていたあるプロジェクトが、宇宙開発事業に融合することで大きな進展を迎え新しいビジネスを生んだのです。まず開発がすすめられたのがAIロボットでした。ことの発端は地球温暖化で増え続ける災害への対処方。災害時の人命救助から復興までを自律的に行うAIロボットシステムが構築されました。このシステムを宇宙開発にも応用しました。さらに医療現場では、人の感性や倫理観を共有し、90%以上の人が違和感を持たないAIロボットが開発され介護現場で活躍しています。こうしたバックグラウンドがあってこそのアイデアでした。

 さて、ミュンさんは御年90歳を超える高齢者です。パートナーも80歳を超えていたが、二人とも体はいたって健康そうである。しかし持病があり体力的にもかなり衰えてきました。介護こそ不要でしたが、この先健康面で心配になった息子は、元気なうちに両親にプレゼントをしておきたいと考えていました。ミュンさんは若い頃、熱烈な宇宙マニアだったのです。その父親の影響を受けて育った息子は宇宙開発エンジニアになったわけです。

 高齢のミュンさん夫妻がどうやって「宇宙旅行」に行くのでしょうか。

 答えは「サイバネティック・アバター」の技術です。サイバネティック・アバターとは、自分の体と同じように感覚を共有できる身代わりAIロボットのことだ。人々はサイバネティック・アバターとVR(バーチャルリアリティー)のおかげで、居ながらにして様々な体験が出来るようになった。この技術を宇宙旅行に導入したわけです。宇宙旅行にかかる費用は大幅にコストダウンでき、疑似体験とはいえ触覚や嗅覚などの感覚までも再現してしまうので体験者は大満足します。もちろん疑似体験では満足できないという富裕層は実体験ツアーに参加しますよ。

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この度、過去にブログで紹介した記事を元に再編して書き下ろした「誰にも教えたくない写真上達法!パート1~4を出版しました。著者ページは以下のURLよりご確認いただけます。

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写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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