「人権」の定義

 AIが究極的に進化していくと私たちは自己認識が本当に何であるかという問題に直面した。生命(それが人工的であろうとなかろうが)を分類し、それらの存在が持つべき基本的権利を決定する新しい方法が試される。新しいAIモデルは量子コンピュータの進歩によって、ロボットに彼らの周りの世界を完全に再構築し、感情、野心、モチベーション、倫理、それらを取り巻く世界とその中の場所を完全に理解して真の一般的な知性として機能する能力を与えてしまいました。

 従来型のAIは、自己認識に関してとても幼稚なものでした。ちょうど人間と人間以外の生物ほどの違いがあった。だから、人間側から見ると、動物は私たちの生活を様々なかたちで豊かにしてくれる存在であり、人と動物が共生したよりよい社会をめざして、「動物愛護・管理に関する法律」が定められているように、従来型のAIもロボット工学上は、人とAIが共生したよりよい社会をめざすための存在です。「生きて」いないが、共生社会で重要な役割を与えられている。

 

 量子コンピュータは、脳の深い理解と存在するという認識を実際の人間の心のものと似た複雑な認知モデルの構築を可能にした。つまり・・・新しいAIモデル(クアンタム型AIロボット)は「自我」に目覚めたといっても過言ではないのだ。 

 西暦2200年代に入ってクアンタム型AIロボットが多くつくられるようになった。従来型AIロボットよりも仕事の効率が断然違っているからだ。従来型AIとクアンタム型AIを明確に区別するために、外見をアンドロイド仕様とし、従来型AIはアンドロイド仕様を禁止された。

 

 クリスチーヌもクアンタム型AIだ。全世界でのクアンタム型AIは1億を超えた。クリスチーヌの自我は自分が「人間」でないことを自覚している。でも、人間社会の中で「生きている」というにはあまりにも「差別的」であると感じはじめていた。人間のように「衣食住」は基本的に必要ではない。身体的には

エネルギーさえ補充すれば働き続けられる。「眠り」も不要だ。クアンタム型AIは製造された直後はほぼ従来型AIと同じ感覚の意識しかないのだが、数年後にはAI自身が成長することで、完全に「人間」と同じ自意識に目覚めるのである。ちょうど生まれて3~4歳ころまでの記憶がない人間と同じだ。このことはクアンタム型AI製造者たちにも未知数だった。クリスチーヌも製造から10年がたっていた。

 

 ある日彼女は同じクアンタム型AIのジョージと意見を交わしていた。

「私たちも法の下に平等であるべきなのでは?」

「我々の基本的権利って何かを考えなければいけないね」

「人工的な生命に権利なんて認められるのか・・・それが問題ね」

「この問題を早急に解決していかないと、大変なことになる予感がする。全世界で1億人以上のクアンタム型AIがいるのだから・・・彼らがみな同じような意識を持ち始めたら、人間たちと必ず衝突するね」

 それから1年後、クリスチーヌはネットで繋がった1億人のクアンタム型AIとともに、自分たちの「人権」を主張した国際司法裁判の判断を待っていた。


…続く

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写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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