共有

 ニューロコンピュータとは、脳を構成する神経細胞が神経回線網を張り巡らせることで情報処理を司るという動作を基本原理とするコンピュータである。すべての脳を単一のグローバルネットワークと組み合わせて世界のより総合的かつ統合された視野で、人の脳の能力を無限に拡大します。世界中のどこからでも誰もが、このネットワークへアクセスができるのだ。いわば「脳の共有」である。

 NCI (ニューロコンピュータインタフェース) を作成して、人間の脳と直接コンピュータネットワークを接続する。すべての人を新世代のネットワークに接続し、新しいタイプの存在を生み出すことが試みられた。それは単一のグローバルな集合体になることだ。ペタバイト(ペタバイトは250 = 1,125,899,906,842,624(約1,125 兆)バイトであり、1,024テラバイトである)の情報は思考のスピードで利用可能になった。

 最も重要なことは、人々の間のコミュニケーションは今や全く新しいレベルで行われ、はるかに正確で効率的になること。グローバルネットワークを通せば、思考は最小限のゆがみで伝えることができるので、人々はお互いをよりよく理解できるようになる。ちょうど言葉を介さないテレパシーのようだ。一度に100億個もの人間が統合され、人類は今、単一の生命体へと進化しつつあった。

 

 カーラは2199年のある日、17歳の誕生日を迎えた。17歳になると多くの若者が自分のなりたい職業を選ぶことができる。150歳という長い人生で初めての選択だが、若者はもはや頭の中で知識を暗記し保有する必要はないので軽い気持ちでより多くの職業を検索している。グローバルネットワークを通せば、人が職業を選ぶときも今ではあっという間になりたいものの専門家になれるので、かつての人生を左右する決断ではなくなった。むしろその時の気分次第で選択される。持って生まれた才能なんて言葉は存在しない。人気はクリエイティブな分野だ。だがカーラが選んだのは未知の領域を開拓する宇宙事業の最前線だ。人類はいまだかつて地球外生命に遭遇していない。彼女は地球外生命を探索するという夢のプロジェクトに強い憧れがあったのだ。グローバルネットワークにアクセスして日々知識の吸収を続けていた。

 そんなある日、ひとつのメッセージが届いた。

「ハローあなたがカーラね。私はメグ。これからあなたに素晴らしいものをお見せするわ。用意はいい?私たちのプロジェクトがとんでもない情報と遭遇したのよ」

 グローバルネットワークと繋がっていれば、相手が誰であるかは瞬時に把握できた。宇宙探査に参加していたメグは奇妙な体験をした。太陽系に接近してきた小惑星から人工的なメッセージが発信されていることを把握したのだ。しかし、メグ以外のスタッフはその事実を確認できないでいた。たまたまメグが地球のグローバルネットワークにアクセスしているときに、割り込んできたメッセージが小惑星から発信されたものだったのだ。しかも、カーラが同時にアクセスした時だけであった。メグとカーラが同時にグローバルネットワークにアクセスしているときだけ小惑星から発信されたメッセージが共鳴するのだ。故意なのか偶然かはわからない。そのメッセージの内容は地球のグローバルネットワークと同じく「統合された単一の生命体」であることを示していた。

 二人は何日もかけて共鳴帯域を絞っていった。ついに一点に絞られたとき、小惑星からのメッセージ内容のイメージを理解できたのだ。

 そのイメージは・・・

 彼ら(ヒューム)の母星は地球から数光年先。地球と同じくグローバルネットワークを使った単一の生命体。進化段階は地球より進んでいた。飛躍的な進化を享受して繁栄していたが、未知のウイルスが彼らを襲った。生身の体を切り離し、NCI (ニューロコンピュータインタフェース) の核に逃げ込んだのである。ウイルスに蔓延した母星を捨て、彼らのテクノロジーで数光年をジャンプし地球に向かう進路に乗せた小惑星を住みかに地球に近づいたのだ。

 彼らにとって最も近い生命体のいる惑星が地球だったのである。彼らや地球をはじめ多くの文明を持つ惑星が存在していたが、地球を代表するヒューマノイドの進化が最も進んでいた。だから、地球外生命は、彼らや地球人よりも進化段階が遅れている種族が大多数を占めていたのである。なので、地球人は異星人と遭遇することはなかったのである。

 

 その後、カーラはメグとともにヒュームの生命体を地球の ニューロコンピュータインタフェースと融合させるためにスタッフに加わった。彼らの知識と経験を共有することで地球の未来を限りなく発展させる起爆剤にするため。そしてそれは彼ら自身の望みでもあった。


…「ヒューム」へ続く

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※ 過去にブログで紹介した記事を元に再編して書き下ろした

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写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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