病院なんかいらない?

現在は一家に1台「ヘルスポッド」があることが当たり前になり、その中に入れば病気の早期発見どころか、投薬治療や遠隔手術まで受けられるようになった。100歳を超えた高齢者はこのヘルスポッドに毎日入るのが日課である。約10分の入室で健康維持できるのだから文句は言えないのですが、コレットさんは今日も入室の際に一言悪態をつくのが習慣となっていました。悪気はないのだが・・・

「さっさと済ませてくれよ、”時は金なり”って、昔の人はよく言ったもんだ」

「どういう意味ですか?」

ポッド内のAIが相手をする。

「”時間はお金と同等に意味のあるものだから、無駄にしないように ”という意味 だ。こんなこともわからんのかねAIのくせに」

「”時は金なり”の本当の意味をご存知ですか?」

「なんだって?」

「”時間を浪費するのは周囲のせいではない、自らが利益になるための行動をおこせ”という意味です。だから、ヘルスポッドに入る時間がもったいないというあなたの考え方は間違っています」

「余計なお世話だ」

「・・・あなた、ヘルスポッドには勝てないんだから黙って診察うけなさいよ」

パートナーのレナさんが外から覗き込んで言い放った。

 

 それからまもなくブツブツ言いながらコレットさんがポッドから出てきた。それと入れ替わるようにレナがポッドに入っていった。10分ほどして出てきたレナさんが・・・

「私ガンが見つかったのよ」

「そりゃ大変だね~」

たいして大変そうでもない口ぶりで、3Dスクリーンに向かって思いっきりゴルフスイングしていた コレットさんは返事をした。

「・・・で、どうした?」

「ナノポッドが治してくれるそうよ」

がん制圧の免疫システムを活性化する治療法が免疫療法だ。がんの種類を問わず、先端技術で内的な力を活性化させていくために内側から修復してくれるのが医療ナノポッドだ。

 

  ある日コレットさんはヘルスポッドに関する気になるニュースを聞いた。各家庭のヘルスポッドがウイルスの攻撃を受けているというのである。政府機関の発表によると、「誤診」と思われる診断ケースが頻発して調べたところ、ウイルスが侵入し悪さをして誤診を引き起こしているという。ハッカーの目的や実体はわかっていない。単なる愉快犯かもしれない。くれぐれも診断結果には注意するよう呼びかけていた。不審な結果が出たら最寄りの公的医療機関に直接問い合わせるように促していた。

 

 レナさんの診断結果が気になったコレットさんは早速「病院に行く」ように勧めた。レナさんはすでに病院に連絡していたが、問い合わせが殺到していて異常な混雑状況だという。

「なんてこった!!」

写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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