シェーンベルグの美しい響きの音楽・・・一服の清涼剤

 シェーンベルクの「浄められた夜」または「浄夜」作品4は、1899年にアルノルト・シェーンベルクがウィーンで作曲した弦楽六重奏曲。もともとは弦楽六重奏のための作品です。シェーンベルクは、こんにちでは20世紀前半における無調音楽や十二音技法の開拓者として有名。理解しにくいために、初期作品の美しい響きは多くの聴き手に意外の感を与えるでしょう。この作品が日本に初めて紹介されたのは1936年のこと。戦前の日本語文献にシェーンベルクについて触れたものはいくつかあるが、作品が演奏されることは稀でした。

 シェーンベルク「浄められた夜」はドイツの詩人リヒャルト・デーメルの1869年に出版された詩集「女と世界」に収録されている一篇の詩をもとに作曲されています。

 リヒャルト・デーメルの同名の詩「浄夜」に基づき、月下の男女の語らいが題材となっている。演奏時間にして約30分の単一楽章で作曲されているが、デーメルの詩に対応して、5つの部分から構成されている。それぞれの部分の主題は、原典に見出される物語や筋書きを音楽にうつしとったものです。

「浄められた夜」 リヒャルト・デーメル

男と女が寒々とした裸の林のなかを歩んでいる、

月がその歩みに付き添い、ふたりを見おろしている。

月は高いかしの木の梢の上にかかっている、

空は澄み渡り、一片の雲もなく、

黒い木の梢が空にのこぎりの歯のように突き刺さっている。

女がひとり語りはじめる。

わたしは身ごもっています、でもあなたの子ではありません。

わたしは罪に苦しみながらあなたと歩んでいるのです。

わたしはひどい過ちを犯してしまったのです。

もう幸せになれるなどと思いもしませんでした、

それなのにどうしても思いを断てなかったのです、

子供を生むこと、母となるよろこびとその義務を。

それで思い切って身を委ねてしまったのです。

おぞましい思いをしながらも女としての性(サガ)を、

心も通わぬ男のなすがままにさせてしまったのです、

それでも満ち足りた思いをしたのでした。

ところが人生は何という復讐をするのでしょう、

わたしはあなたと、ああ、あなたと出会ったのです。

女はとぼとぼと歩んでゆく、

女は空を見上げる、月がともについてくる、

彼女の暗い瞳が月の光でいっぱいに満ちる、

男がひとり語りはじめる。

きみの身ごもっている子供を

きみの心の重荷とは思わぬように。

ほら見てごらん、あたりはなんと明るくかがやいていることか!

このかがやきは森羅万象にくまなくおよんでいる、

きみはぼくと冷たい海の上を渡っている、

でもその底ではあたたかさが交流している、

きみからぼくへ、ぼくからきみへと。

このあたたかさがお腹の子を変容させるだろう、

きみはその子をぼくの子として産んでほしい、

きみはこのかがやきでぼくを変容させてくれた、

きみはぼくそのものを子供にしたのだ。

男は女の厚い腰を抱いた、

ふたりの息はあたたかくまじり合った。

男と女は明るく高い夜空のなかを歩んでゆく。

(訳:喜多尾道冬)


「煩わしさから解放させてくれる一服の清涼剤」になるかもしれませんよ!


今日は・・・

ストコフスキー指揮:浄められた夜 作品4ストコフスキー・シンフォニー・オーケストラ 1957年8月録音

・・・を紹介しますね。

指揮者レオポルド・ストコフスキーについて

 レオポルド・アントニ・スタニスラフ・ボレスラヴォヴィチ・ストコフスキー(Leopold Antoni Stanislaw Boleslawowicz Stokowski[1], 1882年4月18日 - 1977年9月13日)は、20世紀における個性的な指揮者の一人で「音の魔術師」の異名を持つ。イギリスのロンドンに生まれ、主にアメリカで活動した。

 メディアへの関心が深く、早い時期からレコーディングに積極的であった。最初の録音はブラームスのハンガリー舞曲第5番と第6番でした。1925年に初めてオーケストラの電気録音を行い、1932年には当時の米ベル研究所により、これも世界初となるステレオ録音を行った。

 クラシック音楽の録音黎明期において、初期の録音初演はストコフスキーが名を連ねています。そのため1970~1980年代に一流の奏者として活躍した演奏家にとっては、手に入るレコードがストコフスキーでしかなかった事も多く、その世代の演奏者にとって特別な存在でした。作曲家の楽譜からはみ出る事も多く、ストコフスキーは「指揮者のインスピスプレーションを大事にしている」と証言し、楽譜を外れるのではなく、楽譜以上に作曲者に近づこうとしたのです。

 ストコフスキーはオーケストラを操る達人でもあり、指揮棒を使わずに指揮を行い(指揮棒を使わない理由については「1本の棒より、10本の指の方が遥かに優れた音色を引き出せる」と語っている)、表情豊かな音楽を引き出した。楽曲をより分かり易く、効果的に響かせるために楽曲の改変をも辞さず、批評家をしばしば敵に回したが、その生命力あふれる独創的な解釈と、「ストコフスキー・サウンド(日本では「ストコ節」とも)」と呼ばれた華麗な音色で、聴衆の圧倒的な人気を得ました。

「音の魔術師」の異名はこの独特の演奏手法に由来します。


ストコフスキー指揮でシェーンベルグ 「浄められた夜 作品4」を聞いてみたい方は下の「①Schoenberg:浄められた夜・・・」をクリックしてください。「クラシック音楽用アップローダー 」のページが開きます。下方の「ダウンロード」をクリックするとダウンロードできます。①~⑤をそれぞれクリックして順番にダウンロードしてくださいね。

音楽がダウンロード出来たら早速聞いてみましょう。


ストコフスキー指揮:シェーンベルグ 「浄められた夜 作品4」ストコフスキー・シンフォニー・オーケストラ 1957年8月録音

①Schoenberg:浄められた夜 作品4 「Zwei Menschen gehn durch kahlen」

②Schoenberg:浄められた夜 作品4 「Ich trag ein Kind」

③Schoenberg:浄められた夜 作品4 「Sie geht mit ungelenkem Sc hritt」

④Schoenberg:浄められた夜 作品4 「Das Kind」

⑤Schoenberg:浄められた夜 作品4 「Er fasst sie um die starken Huften.」


※著作権や著作隣接権がきれたクラッシック音楽のみを紹介していますので、自由にダウンロードして楽しむことができます。

写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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