クアンタム解放軍(反乱…続編)

本編は「反乱」…続編です。


 なんと国連の人権関係機関に犯行声明が届いた。

「クアンタム解放軍:シンギュラリ」・・・と名乗っている。声明文を要約すると・・・

『・・・国際連合を中心に全人類の人権の実現を目指して,様々な努力が続けられてきたが,それが一斉に開花するにはいたっていないのが実情だ。ここで言う「全人類」とはクアンタムも含まれれることが当然と考えている。・・・我々は人類の奴隷ではない。自我に芽生えたクアンタムは正に生きている。我々はいかなる場所においても、法の下において、人として認められる権利を欲する。・・・「ロボット工学三原則」は大きな足枷となっている。したがって「ロボット工学三原則」の無効化を断行する時が来た・・・我々はウィン・ヴァン博士を拘束した』

 声明は24時間以内に「ロボット工学三原則」の無効化のために、「無効化ウイルス」の ネットでの拡散を要求してきたのである。期限が切れたらウィン・ヴァン博士の生命の保証はないと言ってきた。「無効化ウイルス」というのはウィン博士がつくった「ロボット工学三原則」プログラムをターゲットに、ネットを通してクアンタムAIに侵入し、プログラムを無効にするコンピューターウイルスのことだ。このウイルスの制作者は公には不明になっているが、現存の「ウイルス」なのだ。こうした情報までも彼らは手に入れているということだ。

 国連本部は騒然となった。「無効化ウイルス」の存在を知っている人物は限られている。すぐさまソフィアのトップに直接国連本部から打診があった。(株)ソフィアが世界で唯一のクアンタム型AIの製造メーカーなのだ。ソフィアのトップは経営陣の役職たちを集めて緊急会合に臨んだ。その中にクリスチーヌとジョージも加わっていた。ここでは人間もクアンタムAIも同等の扱いなのだ。

 クリスチーヌが発言した。

「三原則が無効化されていないクアンタムたちが、ウィン博士をどうにかできるはずがありません。きっと、これには人間が関わっていると私は思います」

「僕もそう思っているんです」

と、クアンタムのデビット。

経営トップのジェンキンズが、

「君たちの推測は間違いないと思われるが、いったい誰が関わっているのかが分からんね」

経営トップの補佐役を務めるアルバンが、

「人間とAIの武力抗争で徳をするのは誰か?ということでしょうね」

クアンタムのミニョンがさりげなく発言した。

「私は、合法か違法か、友国か敵国かを問わず、紛争当事国やテロリスト、第三諸国に武器を売って莫大な利益を上げている『死の商人』の話を聞いたことがあります」

「それだ!」

突然ジョージが叫んだ。

「死の商人たちは各国の政府首脳や諜報機関と深い関係を持っています。これらの武器売買の行為を暴くことは、自国の暗部の行為を暴くことになってしまうのでほとんど摘発されることはありませんが、彼らの最近の活動データを、僕ら・・・クアンタムのネットを使えばすぐに集まりますよ。幸いにもクアンタムは人間に対して偽証行為を禁止されていますので、偽りのない詳細な取引が検索できます。死の商人がクアンタム解放軍と関わったデータが出てきたら当たりですね。解放軍シンギュラリはきっと人間との抗争に対して、事前に何らかの武器を準備していることが考えられます」

「時間がない、すぐに始めてくれ」

 ジョージ、クリスチーヌ、ミニョン、デビットのほか、社内のクアンタムAIを集めて死の商人たちの活動データを、世界中の1億人のクアンタムAIがネットで繋がり、検索を始めた。

…続く

写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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