メレンチーの奸計(ルスラン博士の本心…続編)

本編は「ルスラン博士の本心」…続編です。


 最近になって、メレンチーは焦りや苛立ちを強めていた。スカイ・フォー対策に進展が見られないルスラン博士の煮え切らない行動が原因であった。

「博士、ハルムたちの情報の中にスカイ・フォー対策に役立つものは見つかったのか?」

「それは詳細をひとつひとつ調べないと何とも言えません」

ルスラン博士は回答をはぐらかした。だが、いつまでもこれが通用するはずがないことも承知していた。その前にユリウスサイボーグにすでに装備されているD・Mウイルス兵器をキャンセルする手だてを講じなければいけない。ウイルスに対するワクチンはすでにできている。ユリウスサイボーグには相互通信のリンクにワクチンを流せば済むだろう。問題は政府軍サイボーグに対しても有効になるようにしなければならない。でなければ、政府軍サイボーグが「死」から逃れる術はない。

 その頃ウィン博士たちはシャリーの警告に対しての対策に奔放していた。まず、この会議内容を列席していた国連難民高等弁務官事務所のノバクに速やかな国連への報告をお願いした。カーラとメグはシャリーに何か手伝えることはないか・・・ということで、スカイ・フォーメンバーも加わり協議していた。シャリーからの提案が実現できれば大きな助けになる。その提案とは、「サリーム」の編成であった。 カーラとメグはヒュームのテクノスーツを身に纏うことで「血の継承者」だからこそスカイ・フォーメンバー同等の身体能力を発揮できるという。もちろん二人はテクノスーツを身に纏っての訓練も必要になる。遅かれ早かれ銀河の独裁をもくろむマリコフとの遭遇という問題を視野に入れておきたいというシャリーの意向もあって全員が承諾した。マリコフが地球に介入してきたとき「サリーム」は大きな防波堤になってくれるだろう。

 スカイ・フォーメンバーにカーラとメグが加わることで「サリーム」は編成される。シャリーの命名「サリーム」とはヒューム語で「救世主たち」という意味だ。


 メレンチーが起こした紛争は膠着状態が続いていた。難民救済が急務となっている現状では膠着状態が少しでも長引くことを願っていた。破壊された街のいたるところにユリウスサイボーグがはびこっていた。奪還されないための配置であった。

 メディアの間では、「メレンチーはもともと軍にパイプがなかったことに加え独裁者だ。側近をイエスマンで固めることが独裁者の常套手段である。軍事の素人が”侵攻すれば簡単に制圧できる”と考え、軍のプロもその間違いを正せなかった」と報じられている。サイボーグが万能というわけではないと身に染みたメレンチーは焦りの極限に来ていた。そしてついに、核兵器を使う可能性に言及する言葉が飛び出してきた。使われる可能性として高い兵器のひとつが、小規模な分ハードルが低く「使いやすい」とされる小型の核兵器だ。広島に落とされた原爆を基準に、威力がその半分のものから、2%程度のものまである。冷戦時の核兵器はその破壊力は、広島を破壊した原爆を凌駕していた。ワシントンの兵器が最大で広島の1000倍、モスクワの兵器には3000倍の威力があったといわれていた。「相互確証破壊」の効果を生み出していたのだ。つまり、”巨大な報復の可能性”という脅威を見せることによって相手の攻撃を抑止する効果が期待できるのだ。そのため、核攻撃など考えられないと見なされるようになっていた。だが、今日では多くの国だけでなく、一部の反政府組織までもが破壊力の弱い核兵器を実戦配備している。威力は広島に落とされた原爆の数分の一に過ぎない。その分、使うことに対する恐怖心は小さく、選択肢として考えやすいものなのである。

 メレンチーはこの小型核兵器の使用をちらつかせていた。ハルムたちはメレンチーのこの言葉にすぐさま反応してきた。

 「核兵器の供与を条件にさらに多くの極秘情報を提供する」と言ってきたのだ。ルスラン博士も当然ながら知ることになった。ハルムたちとの商談の情報をつなぎ合わせると、背後にマリコフという銀河の独裁者の存在が浮かび上がってきた。一計を案じた博士はラウロに・・・


…続く。

写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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