転送ポータル

本編は「マーシャン・リーム」・・・続編です。


 チェスラはバリーとともに完成した転送ポータルを起動するために、地下発射施設(サイロ)のゲイトにきていた。

 場所は新疆ウイグル自治区東部にある哈密(ハミ)市(クムル市)近郊である。北と北東はモンゴルと国境を接している。クムル市は、1975年から2015年まで「哈密地区」「クムル地区」の名称で呼ばれていた自治体である。2016年にクムル市に昇格している。ここ以外にも中国軍は北西部甘粛省の砂漠地帯に大陸間弾道ミサイル(ICBM)用の地下発射施設の建造物を建設していた。建造物はクムル市から約100キロ南西に位置している。そして、実際の核弾頭の数の3倍以上のサイロが建造されていた。

 バリーは国防という観点から、ミサイルの「シェルゲーム」を考えていた。シェルゲームとは、平らなテーブルにコップ3個を逆さに置き、そのいずれかに玉を1つ入れてからすべてのコップをすばやく動かし、どれに玉が入っているのか分からないようにするトリックのことだ。

 長年、危機の際には、某国の巨大な核戦力あるいは、非常に正確に相手を攻撃できる最新型弾頭ミサイルによって、自国の地上軍が攻撃されてしまうと恐れてきた。バリーの計画は、ミサイルをシャッフルすることで、ミサイルの正確なありかが諸外国に知られないようにしたいという狙いがあった。非常に正確に相手を攻撃できる最新型弾頭ミサイルによって、中国の地上軍が攻撃され、また仮に中国のミサイルの一部がそのような攻撃を免れても、急速な発展を遂げている某国のミサイル防衛システムによって飛行中に無効化されてしまうかもしれない。そうなると、中国の核戦力は役に立たない代物になりかねないわけだ。だから、ミサイルの配備状況を外部の人間が確信を得ることが困難なシステムにしておく必要がある。ミサイルの配備状況を確実に、そして短時間で変換するには、”転送ポータル”が必要不可欠であると結論付けたのである。

 

 しかし、転送ポータルの起動にはリスクが伴う。巨大な空間の裂け目ができることで膨大なエネルギーが放出されるのだ。この放出されたエネルギーを探知される可能性は無きにしも非ず。誰に?・・・チェスラにとって最も恐れているのはヒュームの宇宙公安本部である。宇宙公安も基本的には内政干渉はしないが、転送ポータルの起動に対して目をつぶっているわけにはいかないだろう。しかし、起動から核弾頭転送までの時間は1時間以内でおさまる。チェスラは核弾頭さえ転送できれば後のことには一切関知しない。宇宙公安が介入してきても後の祭りだ。問題は、起動の前に大量のパワーチャージが必要なのだ。太陽光をエネルギーに変換するのに20時間かかる。二日をかけてパワーチャージする。そしてチャージが最終段階に入ると、夜間には夜空にくっきり転送ポータルのアーチが輝いて浮かび上がる。これをサリームたちが察知すれば介入は間違いないだろう。

 サリームの介入を阻止しなければこの計画は水泡に帰すことになる。幸いにもスーパーツインズは今、地球にはいないはずだ。スカイ・フォーはアメリカ、ファンタスティック・スリーは日本にいる。

 チェスラはマリコフにディルクとディーデを地球に派遣するよう要請した。この二人はマティアス星人だ。

 一方日本にいるリリー・セトウチはあることでサイモンとラウロに相談を持ち掛けていた。


…続く

写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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