苦 戦

本編は「予知夢」・・・続編です。


 オフィスは一気にあわただしくなった。

 室内に鎮座していた小型転送ポータルが輝き始めた。アーチの中からメグが、続いてカーラが姿を見せた。

 早速サリームの全員が、クムル市にある地下発射施設(サイロ)のゲイトに飛んだ。もちろん転送ポータルの出現現場である。

 現場に到着して早々、スカイ・フォーのデビットが最初に遭遇したのは、髪は銀色、耳はなく、頭から角のような二本の突起が10㎝ほど伸びた濃い茶色の肌をした異星人。彼は転送ポータルから数十メートル離れてあたりを監視していた。異星人はガーシャ星人だ。 

 

デビットが声をかけた。

「核ミサイルを盗もうなんて、何を考えてるんだ」

ガーシャ星人は

「・・・誰だ?」

「僕はスカイ・フォーのシルバーだ」

「お前が噂に聞いていたクアンタムAIなのか?」

「噂が広まっていたのは光栄だね。ところで君の名は?」

「ガーシャのジルだ。邪魔はさせない」

「おっと、邪魔しに来たんじゃない、止めに来たんだジル」

「つべこべうるさい奴だな。これでも喰らえ」

 突然ジルが大きな光の塊で攻撃してきた。デビットに向かって、腕から連続的に光の輪が放たれた。デビットはすぐさまパワーウェーブで応戦した。すべての光のリングをはじき返して消滅させると、すかさずフラッシュリングで反撃した。しかし、相手はこちらのフラッシュリングを巧みな身のこなしでかわしてしまう。

 ジル以外のチェスラたちも巨大な転送ポータル周辺で広範囲に散らばっていたが、パワーウェーブの光跡で異変に気づいた。

チェスラがつぶやいた。

「サリームが来たか・・・望むところだ」



ついにクリスチーヌ他サリーム全員が巨大な転送ポータルを前にしてチェスラ一行と対峙した。

 チェスラたちは総勢20人ちかくいた。それほどこの転送ポータルを死守したいという思惑が見えていた。

バリーが心配顔でチェスラに

「大丈夫か?あなたの最も恐れているスーパーツインズも来ていますよ。今、スーパーツインズは地球にはいないはずでしたが・・・」

「こちらはサリームの2倍の戦力だ。しかも、精鋭の特殊能力者を集めている。我々にはマティアス人という強力な助っ人が控えておる。心配は無用だ。そんな暇があったら、核の転送準備を急ぐんだ」

サリームたちは倍の人数を相手に格闘を余儀なくされた。

 

 デビットに代わってクリスチーヌがジルと対峙した。ジルの左の手には自身が発した光のリングが纏わりついていた。これが盾のような役割を果たしていたのだ。ジルはフラッシュリングに似た武器を持っていた。リングの盾に阻まれてクリスチーヌのフラッシュリングがすべてはじき返されてしまっていた。ヒートビームも同様にはじかれてしまう。逆にジルのリングが隙をついて無数に襲ってくる。防戦する一方になってしまった。なんてことだ・・・

 ジルのリング盾を忌々しく見ていたその時である・・・

 クリスチーヌの脳裏にフラッシュリングの新たな使い方がひらめいた。シャリーからフラッシュリングの使い方は無限だと教わっていたことを思い出したのだ。

 それは自らのフラッシュリングで自身の身体を隈なく覆うようにしてバリアを張ることだ。頭からつま先までフラッシュリングが幾重にも重なりバリアが張られ、ジルの攻撃から身を守ってくれる。苦戦を強いられていたが、間一髪のところでフラッシュリングのバリアが功を奏した。

 ジルは実質的に右手のみで攻撃、左手は盾の役目を背負っていた。それに対して身体全体にバリアを張っていたクリスチーヌは両手が攻撃に使える状態だ。明らかにクリスチーヌが有利となった。クリスチーヌはジルの頭部と腰にほぼ同時にフラッシュリングとヒートビームを浴びせた。クリスチーヌのフラッシュリングが遂にジルの頭を直撃した。ガーシャ星人は頭に衝撃を受けると致命傷となる。ジルはぐったりしてその場に倒れこんだ。

 クリスチーヌは防御と攻撃が飛躍的に向上したフラッシュリングの新たな使い方を他のスカイ・フォーメンバーにイメージで伝えた。

 一方のファンタスティック・スリーのサイモンとリリーは変身を交えて、ヒート・セーバーを駆使しながら相手に対応していたが苦戦を強いられていた。時にスーパーツインズ、そして次の瞬間にはスカイ・フォーメンバーの誰かに変身して相手を惑わせていた。ヒート・セーバーは接近戦では大いに威力を発揮した。スーパーツインズに変身すればテレキネシスも使える。だが、一度に二人を相手にするのは至難の業だ。

 

 そしてラウロはというと・・・

 ラウロは、今では腕だけではなく身体をも強力なボディに変身させることができるようになっていた。まるで特殊合金のレスキューボディだ。怪力パワーを発揮して相手を圧倒していた。しかし、怪力パワーも一度に複数人相手はきつい。

 サリームメンバーはパワーを発揮していたがいずれも苦戦を強いられていた。特にスーパーツインズはテクノスーツに身を固めているが、もともと生身の人間である。徐々に疲れも生じていた。そんな時、ミニョンとサイモンがドゥルーズ星のサイボーグ4人に囲まれてパワーを吸収されてしまった。パワーを吸いだされたミニョンとサイモンはその場でぐったりしてしまった。エネルギーがなくなればクアンタムAIもサイボーグも活動できない。夜の時間帯なので太陽光エネルギーを吸収できない。ドゥルーズ星のサイボーグたちはあらゆるエネルギーを吸収して自分のパワーに変換する能力を持っていた。これにはスカイ・フォーもラウロも、サイボーグであるリリーも要注意であった。

 ドゥルーズ星サイボーグはなんと10人もいた。チェスラはサリームメンバーがクアンタムとサイボーグが7人、生身の人間はスーパーツインズだけであることを計算していたようだ。

 

…続く

写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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