侵 入
シュメール人がマリコフの次元ポータルの犠牲となったのはもう6年前である。6年間シュメール人は元の次元に戻る方法を模索し続けていたのである。ドーム都市の周辺には原住民の部落が点在していた。原住民は友好的な人種であったことが幸いし、シュメール人たちは今日まで生き延びることができたのである。 そして約3年前にサーク人5人が加わり、1年前にはヒューム人4人が加わったのである。いずれもマリコフたちの核の転送阻止に関わった結果だ。
ヒューム人シュールは、ドーム都市の元住民の一人から次元ポータルが設置されている都市があると聞かされたことを打ち明けてくれた。サリームたちに希望の光が差し込んだ瞬間であった。
しかし、ドーム都市への侵入方法が分からない。彼らマリコフの犠牲者たちにはテレポートできる者はいなかった。元の次元に戻りたい一心で、彼らはドーム都市への侵入を模索する毎日を送っていたのである。だから、ドーム都市周辺の生命反応を探索して、都市からの逃亡者を見つけると、彼らから侵入のヒントを見つけようとしていたのである。とはいえ、逃亡者は1年間でほんの数名である。これまでにドーム都市の住民だったという逃亡者は16人が彼らの仲間になった。ドーム都市から逃亡してきた元住民の聞き取りから、脱出してきた経路へ逆に侵入しようと試みたが叶わぬことだった。そもそも逃亡者は戻ることなど想定していないのだ。
しかし、そこへ現れたのが同じマリコフの次元ポータルの犠牲となったサリームたちだった。彼らの登場でヒューム人たちの運命が大きく変わったのは間違いない。
クリスチーヌが提案した。
まずは偵察である。次元ポータルの設置してあるドーム都市にテレポートしようというのだ。方法は簡単。次元ポータルの設置を知っている元住民に、現場をイメージしてもらう。そのイメージに向かってテレポートすればよいのである。
サラとニナ、それにサイモンとリリー、案内役の元住民の5人が組んでテレポートを決行することになった。
転送先のドームは人口100万人都市である。この都市のAI完全管理区域の中枢に位置する都市と行政を管理する技術フォーラムの一角に次元ポータルはあった。テレポートするにあたり、まずはサイモンとリリー、そしてサラとニナが元住民に変身できる体制をつくった。本来の姿では目立ちすぎるからである。彼らならいざという時、スーパーツインズにも変身できる。案内役の元住民が先導する形だ。
目立たぬように死角となる現地を選びテレポートした。
すぐに案内役のスランのあとに続いて技術フォーラムの通路を進んだ。巨大な空間が広がっていた。通路は比較的まばらな人々の往来である。天井を見上げると幾重にも重なるように各階層につながる通路が縦横に張り巡らされていた。すべてが幅10mくらいある自動走路である。ドームの天井を目視することはできないほどスケールが大きい。人々の中に混じって、明らかに人間でないと思える人型ロボットが周りの様子を窺うように散在していた。どん詰まりで自動走路が終わると、そこには巨大なトンネルのような建造物の入口が大きく口を開けていた。その入口は高さ10mはありそうな大きさで、時折波打つように揺らいでいた。
スランが振り向いてサラたちに、
「あの揺らいでいるように見えるのが、次元ポータルの入口ですよ」
リリーが
「ポータルは常時稼働しているのね?」
「そうです、他次元世界との通商ルートになっています」
サイモンが
「通商ルート?」
「ヴァースでは自分たちの宇宙へ視野を広げる替わりに次元ポータルを使って、他次元世界を相手に通商を展開しています。でも、通商相手の他次元世界には厳しい規定を設けています。見てください、今出てきた人たちは他の次元からのお客ですよ。対応しているのは政府のアンドロイドたちです」
スランは次元ポータルの揺らぎから出てきた身体に茶系統のローブを羽織った頭髪のない幾人かの人物を見ながら小声でつぶやいた。
「・・・そこのお前たち、何を見てるんだ?」
突然背後から声が聞こえた。
人型ロボットが警戒するような仕草で、その場を立ち去るように詰めてきた。サイモンたちは長居は無用と悟りすぐさまその場を離れた。ドーム都市内部の様子、次元ポータルを確認した彼らはいったん外界に戻ることにした。
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