ルフィナの抵抗
一方、次元ポータルに吸い込まれずに一人残されたルフィナはどうなってしまったのか?
ルフィナはリオネルとフィオナ、さらにマリコフを相手に一人で対峙することになってしまった。多勢に無勢、当然ながら勝負はあっさりとつき、マリコフに拘束されてしまった。気がつくと彼女は前面が透明のガラス張りの奥に長椅子があるだけの特殊な小部屋に幽閉されていた。「特殊」というのは、様々なサイコパワーを持っている捕虜となった当事者のパワーを封印することができるアンチシステムが施されているのである。だから、テレポート、テレパシーはもとより、変身も憑依もテレキネシスもマインドコトロールもできない。逆に外部からのサイコパワーもキャンセルされてしまう。つまり、外部との会話だけはできるが、拘束されている者も拘束する者もお互いのサイコパワーによる影響はすべてブロックされるのである。考え方を変えれば、これはある意味対等の立場で交渉することができるアイテムになり得る。
ルフィナはこの独房の特性を存分に活かして、マリコフを相手に怒鳴り散らしていた。
「マリコフさっさと来やがれ!あたしと差しで話をしようじゃないか。あたしは次元ポータルなんか怖くないよ。異次元に送りたけりゃ送ってくれてもいい・・・だけど、その前に何であんたが次元ポータルを操れるのか教えろ!」
独房のあるフロアの正面の出入口が音もなくスライドするとマリコフが入ってきた。
「ルフィナ、相変わらず威勢がよいな・・・顔に似合わず言葉遣いが汚いのは以前にも増して健在だね。特別あつらえの独房の居心地はどうだい?」
「どおってことないね、ようやくお出ましか!・・・さっきの質問にさっさと答えろ!」
「そう急かすな、私はどこにも逃げやしないよ。お前はカーラとやらに洗脳されたんだぞ、いい加減に目を覚ませ」
マリコフはいつも鞭を持っている。この鞭には次元ポータルを起動させる仕掛けが施してあるのだ。当初は持っていなかったが、8年近く前からこの鞭を肌身離さず持つようになった。
「カーラは心の底をくまなく見せてくれたが、あんたの心はいつも闇にとざされてんだよ」
「その闇の中を少しだけ見せてやろう・・・次元ポータルは私が偶然手に入れたものだ。転送ポータルに入った時、時空の裂け目ができた瞬間に偶然に異次元に入り込んだのさ。その異次元とは、今カーラたちが居るところだ」
「それじゃあ、戻ってこられるんだね?」
「それは保証できないね。彼らとの交渉の結果次第だろう」
「彼ら・・・?」
「ヴァース人というドーム都市のアンドロイドたちだ・・・そこは人間をAIが牛耳っている世界だ」
「交渉ってのは?」
「私が迷い込んだ時、彼らは核兵器を欲しがっていた。彼らもつくる技術は持っているが公に製造できない事情はこの次元の宇宙と同じだ。通商規定があるのも同じだ。そこで、私の持っている核を分けてやったんだよ。どこの世界でも核を欲しがっている奴はいるもんだね。その見返りに簡易型の次元ポータルを起動できる装置を頂戴したってわけだ。ドーム都市内には大型の次元ポータルもある。でも、私が頂戴したのは簡易型だから、次元ポータルといっても我々の次元と彼らのいる次元を結ぶだけの機能しかないが、おかげで私はこの次元に戻ることができたんだ・・・どうだ、そこから出してやりたいが条件がある」
「何だい、条件ってのは?」
「カーラからの洗脳を解くことだ」
マリコフはルフィナがカーラに洗脳されていると思い込んでいるらしい。マリコフも、カーラやメグがマインドコントロールができることは承知している。
「余計なお世話だ、それに洗脳されたわけじゃない。自分の意思だ。洗脳か、自分の意思か・・・それを証明する術は、あたしの心をテレパシーで探るしかないよ。もし洗脳されているとしたら、あんたはマインドコントロールで私を洗脳から解放できる。でも、ここからあたしを出さないとあんたにはどうすることもできない・・・どうするマリコフ?」
マリコフはルフィナの目の前を左右に行ったり来たり、落ち着きがなくなった。しばらく考え込んでいたが、
「良かろう、そこから出してやる。ただし、おかしなマネをしたらすぐさま次元ポータル行きだ!・・・分かっているな、お前は所詮私のサイコパワーには勝てないんだぞ」
確かにマリコフのサイコパワーは最強と言っても過言ではない。テレキネシス、テレパシー、マインドコントロールはもちろん、テレポートもできるし、口から発する強力なコールドスモークは一瞬で相手を氷漬けにしてしまう。それだけではない、ヒートショットは一瞬で熱地獄を出現する。
ルフィナの脳裏にはある考えが閃いていた。それは・・・
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