バリーの誘惑
バリーの誘惑
翌日、バリーはモニターでジュディのGPSを追っていた。
ジュディは週1回の登校のはずであるが、今日もスクールに登校していた。ジュディのサイボーグボディにはGPS機能が内蔵されていた。このGPSをバリーはひそかにセッティングしてジュディを監視していたのである。
バリーはさっそく自分もスクールに赴いた。さも偶然に出会ったかのような態度でジュディの前に現れた。
「・・・ジュディ、偶然だね。昨日は当店に来てくれてありがとう」
「あらバリー、おはよう!昨日はありがとね・・・このボディとても快適よ」
「あれ、今日も登校日なの?」
「そうじゃないの・・・何だかじっとしてられなくて、一人でも多くの友達にこのボディを見てもらいたいという誘惑に負けたのね」
「じゃあ、今日は授業ないんだ」
「よかったら・・・付き合ってくれない?」
「えっ・・・でも・・・」
ジュディはそのつもりはなかったので断ろうとしていた。バリーにはもともと「天然たらし」の男の特徴があった。ポジティブ思考で、誰とでも気さくに話すことができる。初対面の相手でも、自分から明るく話しかけたり細やかな気遣いができ、サービス精神が旺盛な男なのだ。しかし、ジュディにとって、そんな男は要注意なのだ。
「・・・メイと約束があるの」
「・・・あの、実はサイボーグボディを手に入れた君だからこそ 、是非とも伝えておきたいことがあったんだ。ゆっくり時間をくれないか。僕からのお願いだよ。実は・・・僕の身体もサイボーグなんだ!」
バリーから、ジュディが予想だにしていなかった言葉が返ってきた。
「うそでしょ!」
ジュディは思わず叫んでいた。
「君も手に入れた自分のサイボーグ・ボディを見れば分かるだろ。外見からはまったく見分けがつかないってことが」
「そうね・・・でも、あなたはいつからサイボーグなの?」
「僕は6歳の時からだよ・・・実は、スクール・エアカーの事故で瀕死の重症を負った。脳だけが辛うじて生きていた状態だったのさ。僕の命を生かす手段はサイボーグ化以外に選択肢はなかった。そして、成長するに従って、それにふさわしいサイボーグボディを新調してきたんだ。サイボーグのことなら何でも答えられる。だから、ボディショップをオーナーから任されているんだよ。僕には・・・夢があるんだ!」
ジュディはバリーの言葉に少し動揺していた。「天然たらし」と思っていたバリーの本当の姿を垣間見たような気がした。
「あなたの夢って、何?」
「サイボーグによるサイボーグのための国づくり・・・とでも言っておこうかな」
「素敵な夢ね、あなたの夢についてもっと聞きたくなったよ。メイも誘ってもいいかしら?」
「・・・あぁ、いいとも。じゃあ、明日僕の店でどうだい?」
ジュディは、バリーについて妙に興味をそそられている自分に気づいた。ジュディはバリーの言葉に心を動かされそうになっていた。
…続く
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