ショップの秘密
ショップの秘密
ジュディはいきなりの仕事への勧誘に戸惑っていた。確かにサイボーグ・ボディーを手に入れると、ボディショップに対して元の体の保管料が毎月発生する。その費用を稼ぐためにバイトを始める学生もいるそうだ。そう考えると、この話は悪くないかもしれないと思い始めていた。即答は避けて、二人はショップを後にした。
ジュディはメイに意見を求めた。
「メイ、どう思う?」
「彼が生身の人間に戻れないサイボーグだったことはちょっとびっくりしたけど・・・ショップで働いてみてもいいんじゃない。何でも経験よ。若いうちの経験は宝物になるのよ。それに、ボディーを手に入れたってことは、いずれ何かのバイトするつもりだったんでしょ」
ジュディは後日、働くことをバリーに伝えた。
数日後の出勤初日に、ジュディはバリーにショップの仕事内容について一通り教わることになったのである。
そして、カリキュラムの最初にジュディは5人のサイボーグを紹介された。そのうち3人は1型サイボーグの人たちであった。さらにもう一人中年のブライアン技師を紹介された。ブライアン技師はボディショップ専属の施術を行っている技師である。ブライアン技師は2型サイボーグだ。彼は物静かで穏やかな性格の持ち主で、ジュディの施術担当者であった。
その彼が、初日のカリキュラムが終わったとき、ジュディにそっと近づいて耳打ちした。
「バリーに気をつけて!」
「えっ・・・!」
ジュディには突然のことで、彼の言う意味が分からなかった。
そこへバリーがやってきたのでブライアン技師はすぐにジュディから離れていった。
バリーが
「ジュディ・・・折り入ってお願いしたいことがあるんだ」
「何ですか?」
「ついてきてくれないか」
店舗控室のさらに奥の扉がスッと開くとバリーは中に入っていった。ジュディはバリーの後を追いかけた。
そこは何人かのスタッフが忙しそうにパネルを操作していた。朝最初に紹介された5人のサイボーグたちもいた。そして、ブライアン技師も・・・
「ここでは何をしているの?」
バリーに尋ねた。
「ここは”サイボーグのための国づくり”プロジェクトだよ」
バリーはジュディの目を見つめて熱心に語り始めた。
その内容とは・・・
バリーはとんでもない構想を練っていた。
”サイボーグのための国づくり”計画だ。バリーがジュディにキャンパスで声をかけた時、夢について言った言葉と同じだった。”サイボーグのための国づくり”は、でまかせではなかったのだ。
その根幹にあるのは、現状の1型サイボーグに対する法整備の不満であった。これを改めなければ1型サイボーグたちには不満が募るばかりだと警鐘を鳴らしていたのである。そのための組織づくりを始めていたのだ。ショップは、彼の考えに賛同した多くの1型サイボーグたちの重要な拠点になっていたのである。
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