ハッキング
ハッキング
「・・・僕は1型サイボーグの人たちの・・・ある意味虐げられた環境を何とか改善したいと思っているんだ!」
バリーの話の内容から、1型サイボーグの人たちの苦悩を思うと、ジュディはバリーの言葉に心を動かされそうにった。だが、バリーのやり方は飛躍しすぎていた。
”サイボーグのための国づくり”計画とは、同士を集めて国の法整備の根幹を崩して、生身の人間と対等な環境を作り出すことだったが、そのやり方が短絡的過ぎていたのだ。
バリーのいう組織はテロ組織のようなものだった。まるでハッカー集団だ。表立った抗議活動はできない現状で、政府の関係先の関連企業を標的にしようとしていたのである。
彼の話を詳細に聞いたジュディは、自分の意志を失うことに恐れを感じていた。
要するに、バリーは2型サイボーグの人たちをも巻き込んで、一斉にハッキングに加担させようとしていたのだ。ジュディとメイはバリーを拒絶するが、バリーはそれを聞き入れなかった。
「バリー、あなたのやり方は間違っているわ!話し合って解決すべきじゃないの」
「それができれば苦労はしないよ」
いっそう険しい目つきになってバリーは続けた。
「いいかい、政府の役人たちは、僕の調べた限りでは100%の確率で、サイボーグはいない。そんな彼らが我々の言うことを聞くと思うか、端から聞く耳を持っていないんだよ」
「それでも、もっといい方法がきっとあるはずよ!」
「だったら・・・それを今すぐ教えてくれないか?」
「1型サイボーグたちは皆、もう我慢の限界を超えているんだ!働いても働いても、生身の人間よりも給料は安い。人間にはない体力のおかげで長時間労働は当たり前、与えられるのは、力仕事、汚れ仕事が関の山だ・・・でも、不満があっても何も言えないんだよ、ナノポッドのおかげでね。幸いどこのボディショップも不満をぶちまけたいサイボーグたちのたまり場になっている。1型サイボーグが主体になって働ける唯一の場所なんだ。一般企業ではあり得ない待遇だけど、顧客として訪れた人間にはわからないんだ」
あくまでもバリーには追従できない旨を伝えると、
「君ならわかってくれると思っていた僕が馬鹿だったよ」
突然 バリーはジュディのボディを強制的に操作しようとしてきた。
ジュディのボディはバリーによってハッキングされそうになってしまったのである。ジュディは必死に抵抗したが、体の制御ができなくなっていった。
そばにいたメイがバリーを止めようと突進して体当りした。しかし、バリーは怯まない。
しばらく耐え忍んでいると、ジュディは自分のボディに秘められた力に気づいた。
ついには、どういうわけかバリーのハッキングを防ぐことができるようになった。
ジュディとメイはバリーから逃げようとするが、バリーはそれを阻止しようとしてきた。ついにバリーはジュディのボディをハッキングで破壊しようとするが、そのときブライアン技師が介入してきた。
ブライアン技師はジュディを守ろうとしていたのだ。ブライアン技師は、当初からバリーの考え方には疑問を持っていたのである。彼がいつかは強引に計画を遂行するときが来ることを懸念していたのだ。ブライアン技師はジュディに逃げるように言うが、ジュディはブライアン技師を見捨てられない。
「私に構うな!」
「・・・でも」
ブライアン技師は味方なのか?
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