リビア危機の収束
青空を背景に人影のようなものがポツンと2つ浮かんでいた。その人影がだんだんと高度を下げながら近づいてきた。その人影はマントを翻していた。さらに近づいてきた。そして、ついに彼らの、いや彼女たちの正体が見えてきた。2つの人影の正体は・・・なんとカーラとメグであった。彼女たちはマント付きのテクノスーツを身に着けていたのである。
デビットが
「まるでスーパーガールだ!!」
ミニョンは
「何それ?」
「スーパーガール、知らないの?200年前のSFスーパーヒーローだよ。だけど2人だからスーパーガールズか、それに胸の”S”字マークがないし、メグのスーツはスーパーガールシリーズの後期に公開されたパンツスタイルだ」
ミニョンが
「やけにくわしいのね!」
カーラとメグは彼らの前にゆっくりと降りてきた。彼女たちを政府軍サイボーグたちに紹介するまでもなかった。政府軍サイボーグたちはざわついていた。目の前にヒュームの”血の継承者”が現れたのだから無理もない。しかも、マントの付いたテクノスーツを纏い空からの降臨とも思える現れ方に驚いていたのである。
メグが先に口を切った。
「皆さんを驚かせてしまったみたいね。核ミサイルは私たちが処理しましたので安心して」
デビットが
「処理したって簡単に言われてしまったけど、どうやったの?」
今度はカーラが話し始めた。
「ウィン博士から核ミサイルが発射されることを聞いて、すぐにトリポリの爆心地めがけて飛んだの。着弾前に捕捉に成功して、ミサイルを時空の穴に転送したの。でも一人じゃ無理で私とメグがタッグを組んで初めて成功できたの。メグがミサイルを捕捉して転送準備に入ったところで私がテレキネシスでミサイルの起爆装置を起動し、それと同時に転送開始することで、初めて時空の裂け目の転送先で起爆できたっていうわけ」
ジョージが
「君たちもテレポートが使えるんだね?それにテレキネシスも?」
メグが
「私たちはテレポート・タイプツーが使えるわよ。私たちはテレキネシスとマインドコントロールもできる」
「それは凄い!飛行も超高速だね」
・・・と、デビット。
カーラが、
「マントのおかげで、超高速でも安定して飛べるの。スカイ・フォーといい勝負ね」
テレポート、つまり転送能力には二つのタイプがある。テレポート・タイプワンとタイプツーだ。タイプワンは一体型といって、自分と自分が接触している物体を転送できる。スカイ・フォーメンバーが使えるのがこのタイプ。カーラとメグが使えるタイプツーは分離型といい、自分以外の目視した物体も触れることなく転送できるタイプなのだ。タイプワン以上に強力な能力だ。ただ超高速で移動している物体を捕捉しながら転送することの難しさはやってみないと分からない。さらに今回は起爆装置の起動と転送を同調させなければならない場合は、カーラとメグのテレパシー能力が役に立った。お互いがテレパシーでタイミングを計るのである。カーラとメグには”血の継承者”にしか備わっていない特殊な能力があった。その能力を最大限に引き出す役割がヒュームのテクノスーツというわけだ。
ミサイルの起爆装置起動と転送を同調させる必要性を説明しよう。単に転送するだけなら、目視できる範囲は限られているし、転送先で起爆すればそこで放射能がばらまかれてしまう。被害が及ばない場所で起爆するためには、転送する瞬間にできる時空の裂け目に入った瞬間に起爆する必要があったのである。
クリスチーヌが拘束したメレンチーとユリウスの幹部は連邦警察に引き渡された。ユリウスのサイボーグたちも指揮官不在では何も抵抗できない程に士気低下が進み、D・Mウイルスも効かない今となってはサリームの敵ではなかった。あっけなく次々と投降していった。
ルスラン博士も身柄を連邦警察に委ねたが、一連の取り調べが済むと恩赦が与えられてほどなく釈放された。全世界に散らばっていたクアンタム解放軍シンギュラリのメンバーは100人に満たなかったが、全員に対してシンギュラリの解散を、戻ってきたルスラン博士とラウロが宣言した。
シャリーの提案したサリームの編成は非常に有効的にリビアの危機を収束してくれた。そしてシャリーはリビアの復興の兆しを確認すると、引き続き支援すること、核の問題は継続して監視を続けるが核放棄に向けての援助を惜しまないことを約束し、さらにマリコフからの脅威はなくなっていないことにも言及し、十分に注意を促して母星に帰っていった。
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