ラルスへの説得

本編は「模 索」・・・続編です。


 スーパーツインズに化身したサラとニナと同時に現れたのは、盗まれたはずの6本の核弾頭であった。これにはその場にいた全員が驚いた。二人はワープ・ドライブの壇上から飛び降りると、すぐさま変身を解いた。本来の一つ目の姿ではななく、仮のラクサム人だったが・・・

 サラがカーラに向かって、

「核弾頭は返すわ」

あっけにとられていたカーラが一言、

「・・・あっ、ありがとう」

ラルスがサラとニナに向かって、

「お前たち、どうかしちまったのか、・・・マリコフ がこのことを知ったらただではすまないぞ」

サラが、

「ラルス、あんたももう分かっているはずだよ。マリコフの核に対する異常なまでの執着心は、決して自分たちを正当化できないし、永遠に幸せにはしてくれないことを・・・」

 そして、ニナが言葉に詰まりながら続けた。

「・・・ただ自分たちの信じる道が見つかった・・・ということさ」

サラはラルスに、そしてスーパーツインズを指して、

「ラルス、あたしたちはこの地球人二人の心の奥を共有した時に、はじめて気づいたことがあった。善悪の区別ができないでいる時、良心を失っている時、自分の行いがいいことか悪いことか、正しく判断できていない。後悔するだけでは未来はよくならない。だけど、後悔する、ということは、こうしておけばよかったと、違う行動をとっていればもっと明るい今になっていただろうと思っているわけだ。そして、後悔することは人が言うほど必ずしも悪いことではないと思うようになった。過去の自分の過ちを後悔することが、必ずしもマイナスなことだけではないと気づいたんだ。後悔の苦しくつらい気持ちから抜け出して楽になるには、過去の自分の過ちを認めて、悪いことをしたとわかっている自分を責めないことだ。そして、今の自分が正しいと思うことにベストを尽くす。つらい気持ちや過去の過ちに向き合うのは簡単じゃないこともわかる。だけど、この一瞬のつらさを乗り越えれば楽になれるんだよ。嘘だと思うならあたしたちの心を読んでみな」

サラはここまで一気にまくしたてた。

ニナが続けて、

「ラルス、あたしたちにとって善き理解者が・・・ここに集まっている地球人たちだよ。彼らは、今も核の脅威に晒され続けているし、実際に核を使った種族だよ。だからこそ、我々を理解できるんだ。彼らを信じて一緒に戦うことこそが正しい道じゃないか」

マウリが、

「父さん、ニナたちの言う通りだよ。みんなもそう思うだろ?」

マウリは仲間を見渡した。

マウリの隣にいたラクサム人が

「そうだラルス、考え直して地球人を信じて見ようじゃないか」


 ラルスは仲間を見渡し全員がうなずいている事を確認していた。

「分かった、それじゃ・・・地球人を信じよう」

ラクサム人たちは、一斉に上げた拳をお互いに付き合わせた。これが同意の印だ。

ラルスは改めてカーラたちに向き合って

「君たちを信じる。そして、一緒にマリコフの脅威と戦うことを約束しよう」

 核弾頭の転送に協力していたバリーの側近三人は、この時点でラルスによってマインドコントロールを解除された。彼らはマインドコントロールを解かれると、眠りから覚めたばかりのようなおぼつかない感覚で周りを見ていた。

 ラクサム人に囲まれていたバリーの側近たちは、サリームメンバーを目の前にして

「俺たち・・・いったい何してたんだ?」

 カーラたちはラクサム人も一緒になって、笑顔で彼らを見つめていた。

そこへ思わぬ来訪者が現れた。既に作動していないワープ・ドライブの壇上に忽然と見せたその姿は?・・・


…続く

写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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