フィオナの説得

本編は「取 引」・・・続編です。


 カーラたちはさらにラッシュと話し合いを続けていた・・・というのは、元の次元に戻る希望を捨てずにこの次元で何年もの間ヴァースの原住民と暮らしてきたシュメール人たちをおいて帰るわけにはいかない。彼らも一緒に戻してもらうためである。

カーラが

「私たち以外にも元の次元に戻してほしい人たちがいます。私たちの次元のシュメール人3人、サーク人5人、ヒューム人4人で、同じくマリコフの犠牲者よ。彼らはもう何年もこの次元でヴァースの原住民と暮らしています。でも、いつか元の次元に戻れることを信じて今まで希望を捨てずに生きてきたのよ」

「マリコフはお前たちの次元で随分と広範囲に暴れていたようだな」

ラウロが

「ひとつ聞きたいことがあるんだけど・・・シュメール人もサーク人もヒューム人もそれぞれまったく別の惑星でマリコフの犠牲になったんだけど、皆この次元の惑星ヴァースに送り込まれている」

ラッシュはラウロの質問が終わらないうちに答えを用意していた。

「マリコフに与えた次元ポータルは簡易型だ。お前たちの次元とこの惑星ヴァースと繋がるだけの機能しか持っていない。したがって、マリコフが次元ポータルを使えば、すべてがこの惑星ヴァースに送り込まれる・・・良かろう、マリコフが送り込んだ輩は我々には必要ない者たちだ。一緒に返してやろう。忘れるな猶予は24時間だ」




話は元の次元に戻る。


 フィオナが兄のリオネルを説得していた。

「兄さん・・・クリスチーヌが言ったことは間違いないわ。スカイ・フォーの4人はラクサム人の被爆2世よ。ミール第3惑星にたどり着いた彼らを助けてくれたのが地球人たちだったのよ。彼らを救ってくれた動機はわからないけれど、地球人は過去に核を使用した歴史がある。被爆者たちに寄り添うことのできる種族だと私は感じたわ。そして、マリコフは一方的な偏見に満ちた思考で私たちを導いてきたと気がついたのよ。わかって兄さん、これ以上マリコフに忠誠を誓うことは間違っているわ。その証拠に、ルフィナもマリコフから反旗を翻して地球人についたわ。ルフィナだけじゃないのよ・・・サラやニナ、ラルス親子やクリスタ、イレール、レオンたちも皆マリコフの狂気の沙汰に気づいたと、クリスチーヌの心の叫びが聞こえてきたの。これだけ何人ものかつて仲間だった人たちが、マリコフの元から去ってしまって、マリコフが焦っているのは間違いない!だから、マリコフ自身が地球に乗り込んで来たのよ。私は核に恨みはあるけれど、その核を利用したいとは思わないわ」

リオネルが

「お前の言うことは理解できる。だけど、地球人たちが皆次元ポータルに吸い込まれてしまって、おまけにルフィナがマリコフに拘束され、さらに次元ポータルに吸い込まれてしまった今、俺達にはどうすることもできないよ」

「諦めるのはまだ早いわ。実はルフィナが次元ポータルに吸い込まれる直前に、私にテレパシーでメッセージを送ってきたのよ」

フィオナは周りに誰もいないことを確かめると小声で、

「兄さん、ルフィナはマリコフをあおり立てて、わざと次元ポータルに吸い込まれたの」

「なんだって!・・・ということは、またこの次元に戻って来られるかもしれないと思っているんだ。だけど、どうしてそう思えるんだ?」

「ルフィナのテレパシーで感じたのは、マリコフ自身も次元の裂け目から異世界に行って戻ってきたらしいわ。そこで次元ポータルを手に入れたの」

「そうなんだ・・・だとしたら、皆を連れて戻ってこられるかもしれない!」


その予測どおりの展開が始まろうとしていたが・・・


…続く


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写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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