お帰り!レナード

本編は「帰 還」・・・続編です。


 突然ソフィアのオフィスに現れたのは、消息を絶って3週間が過ぎていたカーラたちサリームのメンバーであった。サリームメンバーだけではなく例のシュメール人たちも一緒である。カーラたちの捜索のために寝る間も惜しんでずっとソフィアのオフィスに詰めていたウィン博士やルスラン博士、それにラルス親子やクリスタ、イレール、レオンたちがいる前に、唐突に表れたカーラの肩にジミーが飛び乗ってきた。

「カーラお帰り!」

スーパーキャットことジミー・オルソンもヘレンと共に来ていた。

ジミーはカーラの肩に乗ったまま彼女の首筋やほっぺたをペロペロ舐めはじめた。カーラはくすぐったそうにしていたが、

「ただいま!ジミーちゃん元気だった?」

そして、ジミーを両手で抱き上げた。


さらに、なんと・・・


カーラの両親やメグの両親も出迎えてくれていた。皆心配していたのである。

メグの両親が

「お帰り!レナード」


その場にいた何人かがレナードを探してキョロキョロする場面が見られた。

レオンが

「レナードって誰?」

メグが

「お母さん・・・もうレナードじゃないよ!」

「そうだったね、ごめん」

レナードが・・・いやメグが皆を見回して、

「私の生まれた時の名前なのよ」


 メグ・バークリー(レナード・バークリー)は実はトランスジェンダーなのだ。出生時に割り当てられた体の性が男性だった一方で、現在はレズビアンを自認するトランスジェンダー女性である。レナードは生まれた時の男性名で、サリーム全員がメグがトランスジェンダーであることはすでに承知しているが、レナードという男性名はサリーム全員が知らなかったのだ。23世紀はトランスジェンダーは普通に受け入れられている世の中であるために話題として上がることも少なかった。

「自分の中に女性の性を感じる部分がある理由は?」・・・と、問われても、「結局のところ私は、男性に性的魅力を感じることはなかった」・・・としか言えなかった。

「むしろ私は、女性に魅力を感じていた。彼女たちと一緒にいたいし、彼女たちのようになりたいという気持ちがあり、欲望と嫉妬のような気持ちが入り混じった“片想い”の感情が激しく心をかき乱す。私はただ、トランスジェンダー女性であるということと同じように、レズビアンである自分にも親しみを感じている」とメグが話していたことをカーラは思い出していた。


 それはそうと・・・


 再会を喜び合っている最中に、カーラは重要な問題をウィン博士たちに話さなければいけないことを忌々しく感じていたが、それを切り出したのがメグであった。


「ウィン博士、緊急に中止していただきたいことがあります。今行われている核廃棄のプロセスです。実は・・・」


 メグは異次元世界でのラッシュとの交渉の一部始終をウィン博士たちに話して聞かせていたちょうどその時、シャリーが室内に設置してある転送ポータルから出てきた。


開口一番シャリーが

「サリームの皆さん、無事の帰還おめでとう!」


ソフィアのオフィスの窓から見える景色はすっかり雪景色に変わっていた。


…続く


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写し屋爺の独り言by慎之介

SFショートショート集・・・《写し屋爺の独り言by慎之介》 写真関係だけではなく、パソコン、クラシック音楽、SF小説…実は私は大学の頃、小説家になりたかったのです(^^♪)趣味の領域を広げていきたいです。ここに掲載のSFショートの作品はそれぞれのエピソードに関連性はありません。長編小説にも挑戦しています。読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。小説以外の記事もよろしく!

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