厳しい道
ソフィアのオフィスは一気にあわただしくなった。ゆっくり雪景色など眺めている暇はなくなった。メグの話から、世界中に散らばっている核弾頭の廃棄予定を中止させる声明を出さなければいけない。ワープ・ドライブの回収も必須だ。直近の核廃棄予定の現場をピックアップすると同時に、サリームメンバーによる中止の介入を余儀なくされた。
次元の隙間に核弾頭をぶち込んで爆破させるやり方では、万が一ラッシュのいる次元で爆破が起きれば間違いなく報復攻撃が始まる。それだけは何としても避けなければいけない。
シャリーにも核廃棄の方法で良いアイデアは持ち合わせていなかった。遠い過去にヒューム人は核の悲惨さを経験していたが、ある意味惑星そのものの壊滅的ダメージを被ったおかげで、核を根絶することに成功したといえるのだ。地球においては本格的な核使用は広島、長崎をおいてこれまでにはなかった。しかし、核抑止力という名のもとに強大な破壊力を持つ核ミサイルが製造されてきた。だが、広島、長崎の数分の一という小さな核弾頭の使用は散発的に行われていた。惑星そのものの壊滅的ダメージを避けるための方策であったが、これが悪い方向に舵を切ってしまった。のべつ幕なしの核拡散を招いてしまったのだ。この結果、これほど大量の核を保有している惑星は銀河広しといえども他にはない。
銀河連合の通商規定で、過去の苦い経験から、核保有の惑星系はすべて通商禁止となった。自分たちの住んでいる星が核によって壊滅するのは勝手である。そんな星と関わること自体を禁じているのだ。もちろん目的は銀河系宇宙への核拡散防止のためだ。だから、ヒュームの子孫が住む惑星として認定されるまでは、厳しい監視のもと一切の接触を禁じられてきたのだ。そしてこれが、最近までまともに地球人がエイリアンやUFOに遭遇することがなかった理由でもある。独自の進化を遂げてきた地球人は銀河系宇宙からガラパゴス化してしまっていたのである。
銀河連合にとっては地球人の核廃棄は望ましいことではあるが、積極的な関与は歓迎していない。あくまでも自らが招いた疫病神は自分で始末しなければいけなかった。彼らは静観するしかなかったのである。
シャリーはカーラたちが異次元から連れて戻ってきたサーク人5人、ヒューム人4人、シュメール人3人の総勢12人を引き取り、核廃棄の良いアイデアが見つかったら知らせると言って、いったん母星に戻っていった。だが、すぐに地球に引き返す事態になるとは予測していなかった。
マリコフはすでに10台以上のワープ・ドライブを完成させていたのだ。マリコフの部下にマインドコントロールされていたインドのハリッシュが持っている核弾頭は、なんと500発以上であった。マリコフは、この核弾頭をすべて完成させたワープ・ドライブで惑星ドンヴァースに転送する計画を着々と進めていたのである。シャリーはサリーム全員が消息を絶ってからも、カーラたちの事前の情報から、密かにマリコフを監視していたのである。
ソフィアのオフィスはカーラたちが核廃棄のプロセス中止のために各地に出払ってしまい、カーラやメグの両親、ジミーたちも三々五々散会して、瞬く間に再会の賑わいは消えて閑散とした雰囲気が漂っていた。
そして、早速ウィン博士、ルスラン博士は資料を検索し始めていた。もちろん核廃棄に向けての厳しい道の新たな模索のためである。完全な核廃絶が完了しなければ地球は銀河系宇宙から孤立したまま、銀河経済の蚊帳の外で放置されたままで終わってしまうのだ。それは地球文明の発展を願う博士たちそして、地球人類にとって耐え難いことだとわかっていた。
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